相続で失敗しないために

 先月、Aさんの父親は他界しました。母はすでに他界しており、Aさんに兄弟はいないため、父親のすべての財産は、Aさんが相続するものと考えていました。
 しかしAさんが、父親の遺品を整理したところ、督促状の束が見つかったのです。督促状を見てみると、Aさん一人では返せるはずもない額が記載されていました。慌てて記載されている貸主に電話してみると、5年前に貸したが、去年の暮れに一部返済があっただけで、借金はほとんど残ったままだとのことでした。
 Aさんの父親は年金生活で、財産といえるものは、わずかな銀行預金ぐらいのものでした。
 Aさんもそんな多額の借金を返せる財産はないので、困ってしまいました。

 このような場合には、相続放棄という方法があります。
 法律(民法第939条)には、「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と規定されています。簡単に言うと、プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続しないということです。

 相続放棄をしようとする者は、家庭裁判所に相続を放棄する旨の申述をします。その申述をする期間は、相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内となっていますので注意が必要です。

ここに気をつけよう!!

  • 相続放棄をしてしまうと、マイナスの財産だけではなく、プラスの財産も相続できないので、亡くなられた方の遺品など手元に残して置きたいものを相続できなくなる場合もあります。
  • 相続放棄をするには、亡くなられた方の財産を亡くなられたときのままにしておくことが必要です。負債の返済のために亡くなられた方の預金などを使ったり、自動車を処分したりすると相続放棄をすることができない場合もあります。
  • 相続放棄をすると、次の順位の方が相続人になるという場合があります。例えば、今回の場合、Aさんが相続放棄をすると、父親の兄弟(叔父等)が相続人となってしまいます。事前にご自身が相続放棄をする旨を伝えておかなければ、突然相続人になり、ご迷惑をかけてしまう場合もあります。

 相続放棄の手続きをするべきかどうかの判断が難しい場合等には、専門家へ相談するとよいでしょう。